クローズアップ現代「アパート建築が止まらない ~人口減少社会でなぜ~」。サブリースは情弱を殺す
問題は「銀行の融資姿勢」「相続税増税」が大きいんじゃないですかね。
空き家率が高いとか、あるいは人口減少社会だとか言われているのに、なぜかアパートの建設ラッシュが止まらないという話です。
需要と供給という経済学の基本を考えると、需要が減っているのに供給を増やしたらどうなるかは自明のはずなんですが……。
銀行の融資姿勢は超積極的
今、銀行の融資姿勢は非常に積極的です。理由の一つにマイナス金利政策があり、銀行は預金を運用せず、日銀に預けたままだと預金が目減りする状況になっています。
そのため、できるだけ銀行も運用(融資)したいと考えているわけですが、融資先があまり多くないというのが現状です。住宅ローンもその一つですが、金利競争が激しく利益率が低めです。
直近の金利だと、変動金利の住宅ローンだと貸出金利は0.5%を下回る銀行もあります。
一方でおなじ不動産への融資でも投資系のローンの場合は高い金利が取れます。そうした意味で銀行にとってもおいしい融資先なんです。
相続税増税が抜群のセールストークに
もう一つが相続税増税です。これは2015年に行われましたね。
これによって、相続税の基礎控除等が縮小されました。
結果として、相続税を支払わなければならない土地持ちの人たちにとって相続税対策のために、アパート建てませんか?というセールスが効果的になったわけです。
サブリース契約(一括借り上げ)で安心感を
サブリース契約という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは不動産の非常に悪質だと思う契約です。
ざっくり説明すると、サブリース契約をした業者は大家さんに対してあらかじめ決まった家賃を入居の有無を問わずに支払うという契約になります。
家賃が補償されるわけなので、投資には二の足を踏む人でも安心しやすいわけですね。
サブリース契約の末路
一方でサブリースにはすごく大きなリスクがあります。それを見ていきましょう。
老人:でも、不動産投資とかリスクあるじゃん。空室リスクとかあるんでしょ?
業者:大丈夫です。サブリース契約といって私たちが借り手となって、家賃をお支払いします。契約期間は30年です。
老人:なら安心だ。固定収入になるわけだね。
業者:でも物件は私どもに建てさせてくださいね(建築費ボッタクリ)。少しばかり高いかもしれませんが、現在の家賃なら15年ほどで元がとれそうですよ。
--○年後--
業者:入居状況が悪いので、約束した家賃ですが、減額させてください。
老人:家賃保証じゃないの?
業者:契約期間は30年ですけど、家賃下げないとは言ってませんよ。法律で家賃の減額交渉をする権利はあるんです。最高裁判決も出てるんですよ。いやなら解約しましょうか?
参考:サブリース契約は家賃保証と聞きましたが、契約期間の間はずっと定額の家賃収入が入るのですか?
老人:……
--×年後--
業者:入居状況が悪いし、物件も古くなってきたので家賃は減額します。あと、周囲の物件と比べて魅力がなくなってきたので、キッチンをリフォームしましょう。業者はウチが指定した業者以外はダメです(リフォーム費用ボッタクリ)。
リフォーム代金はもちろん、大家さん負担です。
嫌なら解約しましょう。
老人:……
--相続発生--
都会に住むこども:こんな赤字の物件いらんわ。処分したい。
業者:かしこまりました。赤字の物件ですので、あまり高値では売れませんが…。
子供:しょうがない。
業者:(販売手数料いただき)あるいは(自社で安値で購入し高い価格で転売)
少し誇張していますが、こういう風になる可能性もあるわけです。相続税を軽くするために始めたアパート経営がこうした最悪の形になってしまうというわけです。
私は、不動産投資をすべて否定はしません。ただ、投資というものは「収益を生み出してナンボ」なんです。不動産なら「適正な家賃で入居してもらう」という事ですね。
それができない物件はキャッシュアウト(現金の流出)が発生します。
サブリース(一括借り上げ)において、そうした損失を業者が純損失として負担することはありえません。
ということは入居者がいないということはその分の負担は大家さんがしないといけないわけです。
入居需要が見込めない土地にアパートを建てるのだけはやめましょう。